セミヤドリガの決断

 ヤドリガ類はチョウ目害虫の中で唯一の寄生性蛾類である。セミやハゴロモの成虫腹部に幼虫が寄生し、蛹になる直前に体表から離れて木の幹などに移り、繭を作って蛹となります。セミから離れて木の幹に移動する瞬間をどのようにして決断するのでしょうか? セミの滞空時間はそれほど長くはないので振り落とされる危険は小さいのかもしれません。繭が作られている場所を調べると、杉林では高さ1m以下の樹幹に多いですが、次には地表面の枯れ枝や笹などに作られるものが多いです。幼虫の体表は細い繊維状のワックスで覆われています。このワックスを脱ぎ捨て、その下に吐糸腺から黄色い糸を出し繭を作ります。繭にはあらかじめ出口が用意され、羽化の時には蛹が出口から滑り出ます。成虫は黒い小さな蛾で目立ちません。雌だけで単為生殖をする珍しい習性であることはよく知られています。羽化した場所付近を歩行して樹皮の隙間に産卵を始めます。直径0.5mm程度の褐色の卵を100〜200粒数カ所に分けて産みます。これらの卵が次の年孵化して、羽化直後のセミやハゴロモ成虫に寄生する過程はミステリーとして残されています。セミヤドリガには天敵としてトビコバチ類のIsodoromoides spが東南アジアで記録されていますが日本での記録はまだありません。

ヒグラシの翅の下の幼虫   セミヤドリガの成虫