キクイムシと共生菌

 最近テレビなどで南米に生息するハキリアリが良く紹介されます。このアリが植物の葉を採集して、地下の巣に蓄え、そこにキノコ(菌)を接種栽培して餌とする特異な習性が自然の驚異とされるからです。
 昆虫の中にはハキリアリ以外にもキノコを栽培利用するものが数多くいます。アンブロシアビ−トルと呼ばれるキクイムシ類がなんといってもおもしろい養菌昆虫です。この虫は伐採した木材の大害虫であり、少し勢いの弱った樹木を最終的に枯死に導く役割をします。時には正常な木の根に入り込み、枯死させることもあります。養菌キクイムシのユニーク点は菌の伝搬方法にあります。ハンノキキクイムシでは胸の節間膜がくぼんで袋となり前胸板の下に入り込みます。その中に菌の胞子が蓄えられ増殖します。産卵前に親は木の材部に自分の体の直径と同じ大きさの坑道を掘り、その壁面に菌の胞子を接種します。雌成虫の産卵後、ふ化した幼虫は壁面に出てきた菌の胞子を餌として育ち、蛹になります。蛹から羽化した成虫はまだ体色が黒くならないうちに坑道を歩き回ります。そのとき胸板の下にある袋が圧力のため反転して外に突出します。坑道の壁面には菌の胞子がついています。もちろんこの時期には雑菌も混ざっているので一緒に取り込まれます。取り込まれた菌は餌になる菌だけが選択的に増殖するのですが、貯蔵器官に付属する分泌細胞からの抗生物質がその秘密だと考えられています。

ハンノキキクイムシの胞子貯蔵器官(矢印) 貯蔵器官から取り出した胞子塊
酵母型胞子(体内)とモニリア型胞子(坑道内) ハンノキキクイムシの染色体
上は雄(半数体)、下は雌