チョウ目幼虫の吐糸の役割


 カイコに代表されるようにチョウ目昆虫の幼虫は口から糸を吐きます。糸を吐き出す目的は蛹になる時自分を守る繭を作るためです。また、幼虫時代に身を守るすみかを作るためにも使われます。代表的な虫はアメリカシロヒトリで、集団で棲む巣を吐糸管の糸で作ります。その他にハマキムシ類やミノガなどの幼虫が葉や枝などを材料にして糸ですみかを作るのです。アメリカシロヒトリでは巣から餌場までの道しるべに糸を利用するのが有名です。このように便利な糸を作り出す吐糸管の構造は意外に変異が小さく単純です。糸の役目はそれだけではありません。幼虫が食事をしている場所から落下すると、用意した糸が命綱となってうまくぶら下がり捕食を逃れることができます。どんな方法で幼虫は命綱をいつも用意しているのでしょうか? カイコの幼虫では大顎で餌を囓りとる時はいつも吐糸管から糸を出し続けています。 その糸を一定の間隔で餌に固定するのです。カイコでは第一胸脚の間に通した糸を器用に二本の爪で押さえて固定します。固定の方法は虫の種類によって個性があります。コナガでは円錐形の吐糸管から出た糸は頭部の圧力で一回一回ミシンで縫うようにかみとった組織の跡に固定されます。いつ落ちても糸が自分の体を吊り下げてくれるのです。あまり落下の危険がないようなアワヨトウなどでも吐糸管が発達しています。さすがに繭を作らず、夜間に餌を切り取って土の中で食事をするカブラヤガや危険なシグナルを感じると地面に落下するハスモンヨトウ、シロイチモジヨトウ、落下の危険が少ないハモグリガの幼虫では吐糸管が退化しています。

コナガ幼虫の吐糸管 コナガ食害痕上の糸 アワヨトウ幼虫の吐糸管