ヤノネトビコバチの運命

 ヤノネカイガラムシの天敵を中国から導入するする過程で、予測されていたAphytis及びCoccophagusはきわめて順調に増殖普及が計られ、全国的に分布するところとなった。しかし中国ではヤノネカイガラムシの1齢・2齢幼虫を攻撃する第三の寄生蜂が生息し、地域によっては密度抑制に大きな働きをしていることが判明している。その寄生蜂はトビコバチ科Encyrthidaeに属するものである。確実な生息地としては大垣氏・大分県の渡辺氏・長崎県の横溝氏・徳島県の行成氏などが訪れた成都市井研県の柑橘園及び重慶市近辺である。この場所からは横溝氏によって1982年3〜5月越冬成虫が航空便で送られてきた。すでに羽化して死亡個体が多く飼育には至らなかった。トビコバチの一種は寄生率4%で雌26頭雄34頭が得られた。成虫の背面に円形の脱出口(3〜5mm)を形成し羽化する。脱出口のあるカイガラをSEMで詳細に観察しても産卵管挿入痕が発見できないことからこの蜂の産卵対象となる寄主のステージは1齢または2齢と推定した長崎県が成虫を導入した。しかし定着を確認するまでには至らなかった。
雌成虫の体長は1.0〜1.2mm全体黒褐色、中脚の脛節(半分)、附節は黄色、前翅のstigma下に黒点がある。中胸背板、後ろ胸背板には網目状の模様がある。触角は長くclabは3節、各節は縦長で長い毛を多数生ずる。mandibleは2歯、産卵管は腹部からやや突出する。雄成虫は雌成虫とほとんど変わりないが触角はさらに長い刺毛を多数生ずる。ヤノネカイガラムシの発育期別には未成熟成虫にはAphytis、成虫にはCoccophagusが攻撃をする。従って1齢・2齢幼虫を攻撃するヤノネトビコバチの導入が成功すればさらに有効な生物防除が見込まれるのではないか。1種の害虫に対する複数種の天敵導入の可否については学問的な議論も重要であるが、地域の特徴に応じて天敵の構成は変化すると考えられるので、特定の組み合わせを予測することはあまり意味がないと思われる。

ヤノネキイロコバチの産卵管挿入痕 ヤノネツヤコバチの産卵管挿入痕
ヤノネトビコバチの背部 ヤノネトビコバチの顔面と触角