ハダニの卵に効果的な農薬

 ハダニ卵に薬剤処理をした場合、卵内の胚に直接作用する殺卵作用と、幼虫のふ化後卵に残留した薬剤に接触して致死に至る場合がある。厳密な意味での殺卵剤は前者の場合であるが、バロックについてその作用機作を探ってみた。

1) 8月、モモ実生14年生の樹に所定濃度の薬液を散布した後、処理葉を1日後、5日後に採集し、ディスクとしハダニ雌成虫5頭を接種し産卵させた。ミカンハダニでは3日後に、ナミハダニでは2日後に成虫を除去し、その後10日後まで卵のふ化状況を調べた。
2)薬剤の散布されていないモモの葉を葉片ディスクとした。ハダニ雌成虫を接種し1日間産卵させる。産卵済みの葉片を1日後及び3日後に規定濃度の薬液に30秒間漬し、その後23度に保ち10日後までふ化状況を調査した。

1 この薬剤はミカンハダニ、ナミハダニ卵に対して致死効果を示した。
2 ミカンハダニの正常な卵は産卵後約72時間で赤色の眼点が胚の上に現れ、96時間後には1対の呼吸器官が卵の側面に現れ、144時間後からふ化が見られる。 薬剤処理を行なった葉に産み付けられた卵は、96時間までには赤色の眼点が現れるが、呼吸器官は形成されない。次第に胚の内容物が萎縮していった。 薬剤処理をしなかった葉に産卵させ、眼点が形成された72時間後の卵に薬剤を処理した場合は、呼吸器官が形成されないままに内容物が次第に萎縮した。 呼吸器官の形成された96時間後に薬剤処理をした場合は直ちに内容物の萎縮が始まった。
3 ナミハダニの場合処理葉上で産卵させたものは、48時間後には赤色眼点が現れるが、呼吸器官が形成されないまま72時間後には胚内部に空胞が現れ、卵は次第に萎縮した。 卵が葉の表面に接していない糸上にある場合にもふ化は起きないことから、雌成虫への薬剤の影響も強いものと思われた。 産卵48時間後の卵に薬剤を浸績処理した場合、72時間後には内部に空胞が現れふ化は見られなかった。 産卵72時間後の卵には赤色眼点と1対の呼吸器官が見られた。 この時期に薬剤処理を行うと卵はそのまま萎縮した。 この薬剤は胚の発育初期には影響が少ないが、呼吸器官の形成を妨げる働きによって卵に致死効果をもたらすことがわかった。

ナミハダニ呼吸器官 ミカンハダニ呼吸器官